頭皮は「頭の皮膚」というよりも「髪の毛の生えている場所」という認識のほうが、一般の方には強いかもしれません。しかし、頭皮の健康を考えることはエイジングケアや髪質を考えることにつながります。他の肌と同様に、頭皮もいたわり、しっかりとケアを行いましょう。
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お風呂から出た後に欠かせないのが保湿ですが、顔やからだには化粧水やクリームを塗る一方、頭皮の保湿に気を使う人はそう多くありません。現代は多くの方が毎日入浴し、顔やからだと同様、髪の毛を洗うようになりましたので、頭皮の保湿はとても重要です。
この記事では、頭皮の特徴について解説後、頭皮の乾燥に関するメカニズム、頭皮にやさしい洗髪の仕方と保湿についてお話します。頭皮の乾燥は、フケやかゆみの原因にもつながります。正しい対処法を知って清潔を保ちましょう。
頭皮とは
頭皮とは、その名のとおり「頭の皮」で、からだを覆う皮膚の一部です。他の皮膚との大きな違いは、頭皮が髪の毛に覆われていることでしょう。そのため、血管が多く、皮脂腺や汗腺も他の皮膚より多いことが特徴です。
頭皮は「頭の皮膚」
頭皮は「頭の皮膚」というよりも「髪の毛の生えている場所」という認識のほうが、一般の方には強いかもしれません。
髪の毛は男性にとっても女性にとっても重要で、さまざまなヘアクレンジングやヘアケア製品が開発・販売されています。しかし、頭皮の状態が髪の質に影響を与えることはあまり知られていません。健康な頭皮を考えることは、健康な髪にもつながります。
頭皮はトラブルが多い
髪の毛のせいで蒸れやすく皮脂の多い頭皮は、細菌の繁殖しやすい場所です。一方で、髪の毛に隠れているために鏡などで確認しづらく、他の皮膚のように傷や汚れが簡単に確認できません。さらに額などに比べて鈍感なため、かゆみや痛みといった皮膚からのシグナルが伝わりにくく、トラブルが悪化しやすい場所でもあります。
重要なのは、日頃からの健康状態のチェックと、適切な洗髪・保湿によって衛生的に保つことです。
頭皮は保水力が低い
頭皮は洗髪のたびにシャンプーなどで皮脂が洗い流されますが、実のところ保湿力は低い場所です。
皮膚のバリア機能の指標として、「経表皮水分蒸散量 (transepidermal water loss:TEWL)」があります。TEWLが多いと皮膚から水分が蒸発して乾燥しやすくなり、バリア機能が低いともいえます。実際、頭皮のTEWLは腕や背中よりも高く、乾燥しやすいといえます。(※1)
またフケが発生している頭皮は、健康な頭皮よりもTEWLが高く、乾燥肌、アトピー性皮膚炎、乾癬などでも同様です。そのため、洗髪による衛生だけでなく保湿によってバリア機能を維持することが、頭皮の健康にとって重要です。
頭皮の洗髪と保湿の実践
実際に頭皮の保湿はどのように行っていけばよいのでしょうか。重要なのは、洗髪時の保湿成分の流出を防ぐことと、その後の保湿ケアです。
洗髪回数の増加と、頭皮の乾燥
頭皮はからだのなかでも汚れやすい場所であるため、洗って清潔に保つことが重要です。しかし、角質層の機能は弱く、不適切な洗髪を続けているとアミノ酸やセラミド、コレステロールなどの保湿成分が流出し、機能が低下する恐れがあります。その結果、乾燥してさまざまな刺激物が肌に侵入してきます。頭皮は刺激に鈍感なので、気づいた時には大きな皮膚トラブルを抱えているかもしれません。
日本人(アジア人)は清潔意識が高く、他の人種と比べて洗髪回数が多いとされており、正しいシャンプー・コンディショナーを選び、正しい洗髪を行うことが大切です。
頭皮にやさしい洗髪方法
以下のような不適切な洗髪は、頭皮トラブルの原因となります。
- 洗浄力の高すぎるシャンプーを使う
- 1日に何度も髪を洗う
- 頭皮を過度にゴシゴシ洗う
- 頭皮を擦らずに、撫でるだけの洗髪
頭皮トラブルを抱えている人は、刺激が少なく潤いを保つようなシャンプーやコンディショナーを選ぶ必要があるでしょう。一方、乾燥肌の人が皮脂洗浄力の高い洗剤を使用しても、角質層に溶出する保湿成分の量が少なければ、乾燥症状は悪化しません(※2)。シャンプーの選び方のみならず、洗い方を意識した洗髪方法が重要です。
頭皮の洗浄と保湿を考えた洗髪方法は以下のとおりです。
- 洗髪前に十分に髪を濡らして大きな汚れを落とし、シャンプーの泡立ちを良くする
- シャンプーをしっかりと泡立て、こすり洗いをせず、頭皮全体に泡がいきわたるようにする
- ぬるま湯を使い、多めのお湯でしっかりとシャンプーを流す。このとき、耳の後ろ、後頭部、髪の生え際は洗い残しが多いため、意識して洗い流す
また、髪を乾かす際はタオルでこするのではなく、優しくなでるようにして髪の水分を吸い取るようにしましょう。その後、雑菌の繁殖を防ぐためにしっかりと乾燥させましょう。
ドライヤーを使う場合は、過度な乾燥を防ぐために髪の毛から一定の距離を離して使用するほか、長時間の使用は控えるようにしましょう。
頭皮の保湿方法
頭皮はほかの皮膚に比べて、角質層の保水力や肌のバリア機能が低くなっています。そのため、ローションなどによる頭皮の保湿が必要です。
角質層の機能には、細胞間脂質のひとつである「セラミド」が重要です。アトピー性皮膚炎やフケ症状は角質層のセラミドが減少していることで起こります。頭皮の乾燥・発疹対策としてしっかりセラミドを補給しましょう。セラミドを配合した頭皮の保湿を売りにした製品は、ドラッグストアなどで購入できます。
また、ヘパリン類似物質配合の保湿剤も保湿・血行促進・抗炎症作用が期待できるでしょう。クリーム製剤はオイルが配合されているので、保湿力が高いぶんベタつきが気になるかもしれません。一方、ローションや泡フォーム製品はオイルフリーですのでベタつきを感じにくい製品です。ヘパリン類似物質配合の保湿剤は皮膚科で処方されるほか、一般でも購入可能です。
頭皮にやさしい生活
頭皮の保湿を考える際には、日々の生活の注意と、からだ全体のケアが重要です。ほかの皮膚と同様に、頭皮も紫外線を避ける必要があります。紫外線による皮膚のDNA損傷は頭皮にも生じ、酸化ストレスを誘発して細胞の炎症を引き起こします。頭皮を健康に維持するためにも、日焼けはできるだけ避けるようにしましょう。
なお、紫外線による皮膚障害を予防する物質には、以下のようなものがあります(※3)。
- ベータカロテン
- リコピン
- ビタミンC
- ビタミンE
- オメガ3脂肪酸
日々の食事のなかで、これらの栄養素を意識して摂取することが頭皮の健康に重要です。魚の油や軟膏成分が皮膚の厚みやしわを改善したという報告もあり(※4)、食事の際は肉よりも魚を選ぶことにメリットがありそうです。
もちろん、ストレスや睡眠不足は肌の健康に悪影響であるほか、喫煙は酸化ストレスを増加させ、皮膚の加齢につながります。食事・生活習慣にも注意して、皮膚の健康を維持しましょう。
正しい洗髪と保湿を知って、頭皮のエイジングケアを
頭皮の健康を考えることは、エイジングケアや髪質を考えることにつながります。他の肌と同様に、頭皮もいたわり、しっかりとケアを行いましょう。
※1 Machado, et.al.The Relationship between Transepidermal Water Loss and Skin Permeability. Int. J. Pharm, 2010; 384: 73-77.
※2 Yokoi A, et.al. A cleanser based on sodium laureth carboxylate and alkyl carboxylates washes facial sebum well but does not induce dry skin. J Cosmet Dermatol. 2014 Dec;13(4):245-52.
※3 Piccardi N, Manissier P. Nutrition and nutritional supplementation: Impact on skin health and beauty. Dermatoendocrinol. 2009;1(5):271-274.
※4 Distante F, et.al. Oral fish cartilage polysaccharides in the treatment of photoageing: biophysical findings. Int J Cosmet Sci. 2002 Apr;24(2):81-7.