「坪庭」のある家にリフォームしよう 知っておきたいメリット・デメリットは?

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(引用)リフォームエピソード 旧家ものがたり Vol.06『町家大工の夢』  住友林業のリフォーム

庭は小さな子どもの遊び場であったり、趣味のガーデニングを楽しむ場所であったりと、さまざまな楽しみ方がありますが、そのなかでも「坪庭」は、主に観賞を目的とした庭にカテゴライズされます。

日本各地の社寺仏閣や公園では、枯山水や白砂青松庭、苔庭、池などの庭園がつくられており、絵画のような美しいこれらは、昔も今も幅広い世代を魅了しています。

こうした各地の美しい庭を、もっと身近で楽しみたいという方には、坪庭のリフォームがおすすめです。日本庭園をコンパクトサイズにして、四季折々の美しい風景を自宅で楽しむことができるようになります。とはいえ、坪庭は「敷地や間取りに余裕がある家庭でしかできないのでは?」と思う方も多いでしょう。

今回は、坪庭のメリット・デメリットや、坪庭のある家にするうえで気を付けたいポイントなどをご紹介します。

「坪庭」とは

(引用)信州支店からのお知らせ 坪庭ご紹介第二弾!!【T様邸】 住友林業のリフォーム

坪庭とは、建物の壁や塀に囲まれた小さな庭を指しています。間口が狭く奥行きが広い町屋などで建物中間部への採光や通気を確保するための空間として設けられた小さな庭が起源であり、母屋と離れの間に設けられた庭園をそう呼んでいました。

現在の住宅では、坪庭を設置せずとも十分な採光や換気が可能な間取りのため、本来の用途よりも趣味や鑑賞のために設置されることが多くなっています。つまり、必ずしも必要なわけではなく、日常生活に役立つようなメリットは特にありません。そのため、費用やデメリット面が気になる方も多いのではないでしょうか。

坪庭のメリット・デメリット

採光や換気は、住宅内の環境を向上させるために必要な要素です。心身の健康にも大きく影響する部分であり、日常に潤いを与えてくれます。また、高齢者では庭いじりを趣味として楽しんでいる人も多く、趣味の場所としても活用できるでしょう。

総務省統計局の調査によると、65歳以上の趣味・娯楽では、男女ともに「ガーデニング」が人気です。
坪庭は、砂利や灯篭などの無機質なものばかりでなく、花壇をつくったり洋風のデザインにしたりと好きなアレンジもできるため、手入れ自体を楽しむスペースとしても活用できます。

政府統計の総合窓口「平成28年社会生活基本調査 調査票Aに基づく結果 生活行動に関する結果」から「表番号4 男女,年齢,趣味・娯楽の種類別行動者率,平均行動日数」の情報を基に作図

一方、日常生活での必要度が低いものに対し、費用面のデメリットはやはり大きくなります。また、坪庭を楽しむためには窓も必要です。窓は壁よりも外気温の影響を受けやすいため、住宅の断熱性能を下げてしまうという問題も起きてしまいます。

坪庭の断熱対策と配置を考える

(引用)信州支店からのお知らせ 坪庭ご紹介第二弾!!【T様邸】 住友林業のリフォーム

デメリット面は気になるものの、坪庭がある住宅はやはり魅力的です。坪庭を設けることで、日常生活に癒しや楽しみを与えてくれるものになるでしょう。そのために、坪庭のデメリット面への対策をご紹介します。

断熱対策

近年のエコ住宅や高断熱高気密住宅は、断熱性能をより高めるために、なるべく外壁の量を多く設計しています。そのため、昔の住宅と比べると窓が少ない造りになっています。窓を設ける場合は窓の面積をなるべく小さくしたり、「断熱窓」や「二重窓」にしたりするなど、窓自体の断熱対策も必要になるでしょう。坪庭への出入りが屋外からできる場合では、窓は飾り窓など、あえて小さな窓とするのも趣があって良いですね。また、居室(玄関、廊下、階段)に隣接させるなど、空調効率をあまり気にしなくてもいい場所を選ぶことも大切です。

坪庭の配置

坪庭はもともと建物の中間層の採光や通気のために設置するものです。ですから、日当たりのよいとされる南側は、庭や駐車場などを設けることが多いため、坪庭は南側以外の方角や、建物の中間部分に配置されます。具体的に下記のような場所が検討できるでしょう。

玄関、階段ホール、水まわりの近く

断熱性能が気になる場合は、玄関、廊下、階段ホール、水まわりなど、利用する時間や頻度が少ない居室に面している位置に計画するとよいでしょう。玄関や廊下などは、来客にも坪庭を見てもらえるので、より多くの人に楽しんでもらうことができます。

和室

和風に設ける場合は、和室と一体化したデザインにすると統一感があります。

屋内

屋内であれば、坪庭を眺めるための窓が必要ないため、開口部の断熱対策が不要です。しかし、石や水などの冷えやすい素材を使用することが多いため、居室よりは玄関や階段スペースの一角を利用するのがよいでしょう。屋内であれば雑草の心配はほぼ不要ですが、湿気や植物の生育環境に気を付ける必要があります。

もともとあったデッドスペースなど

リフォームをすると、オール電化によってガス設備や灯油タンク、ボイラーといった大きな設備が撤去されたなど、住宅の庭のスペースが空くことがあります。こうした空きスペースを利用して、坪庭にリフォームするのもひとつの方法です。
デッドスペースでは、坪庭を楽しむための窓がもともと無い場合も多いですが、こうした箇所では「窓の増設」を行います。坪庭を楽しむためには、窓枠をはじめとした窓のデザインも重要です。坪庭の設置と合わせてリフォームすれば、統一感を出しやすくなります。

手入れの方法

坪庭を楽しむためには手入れも必要です。手入れの苦労を減らすために、坪庭自体を小さく、つくりましょう。

草取り

土よりも芝生や砂利敷きのほうが、雑草の発生が少なくなります。砂利敷きの場合は、砂利の下に防草シートを敷くと、より雑草の発生を減らせるでしょう。

落ち葉拾い

紅葉で色鮮やかな落ち葉を楽しむことも坪庭の魅力ですが、落ちてから時間の経った葉は、見た目が良くないので取り除く必要が出てきます。こうした手入れを面倒と感じる場合は、常緑樹を多めに植えるのもおすすめです。

不要な苔の除去

坪庭は建物の外壁に囲まれているため、常に日陰になる箇所が出てくることが考えられます。そうした場所は湿気も多く、苔が発生しがちです。高圧洗浄機やブラシでの掃除が必要になります。

植物の消毒等

植木のなかには、毎年のように虫の被害にあってしまうものもあります。気づかずに放置していると、葉っぱが虫に食われ、地面にはフンが大量に落ちてしまうこともあるため、見た目にも悪影響です。虫がついてしまった木や、毎年虫の被害にあう植物は、植物用の消毒を散布します。最初から虫がつきにくい植物を選ぶことも大切です。

小動物の侵入対策

坪庭に水場があったり、菜園があったり、寝床にちょうど良い花壇があったりすると、小動物にとっても居心地の良い場所になってしまうこともあります。フンのようなものが落ちていたりしたら注意しましょう。こうした場合では、侵入そのものを防止する柵を設置したり、センサー付きの照明を設置したりすると、嫌がって居付きにくくなります。

まとめ

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

観光地などで美しい庭を見たり、古民家などで坪庭の楽しみ方を知ったりしたことが、坪庭に憧れるきっかけになった、という方もいるのではないでしょうか。

日本の有名な庭園では、宗教や思想によって分類や形式があり、庭の作り方にもそれぞれに特徴があります。多くの庭では「表しているもの」のテーマがあり、それをさまざまな技法で表現しています。ある庭園では極楽浄土や不老不死を、またある庭園では実際にある風景の模写など、テーマは空想上のものから実在するものまでさまざまあります。そして、これらを表現しているものが、枯山水や植栽といった技術です。

日本庭園をそのまま坪庭に表すことは、スペース的にも技術的にも難しいものですが、坪庭のデザインをするうえで、その歴史や技術は大きなヒントになります。旅行の予定がある方は、行先の庭園を訪ね、坪庭のデザインや設計の参考にしてみるのもよいかもしれません。